値引きは5万円ではない|住宅会社の利益を削る“本当のコスト”とは
住宅業界で、当たり前のように行われている行為。
それが「値引き」です。
100万円の工事に対して、
「今回は5万円だけ下げてください」
この一言。
あなたも何度も経験しているはずです。
そして、多くの経営者はこう考えます。
「5万円くらいなら仕方ない」
「まだ利益は残っている」
ですが、ここに致命的な勘違いがあります。
■ 値引きは「5万円」ではない
仮に、あなたの会社の利益率が30%だとします。
100万円の工事。
利益は30万円。
ここで5万円を値引く。
多くの人は、こう計算します。
30万円 − 5万円 = 25万円。
「まだ25万円も利益がある」
数字としては正しい。
しかし、経営としては完全に間違いです。
■ あなたは「売上」から引いたのではない
この5万円は、
売上100万円の中から引いた5万円ではありません。
利益30万円の中から削った5万円です。
つまり何が起きているか。
30万円 → 25万円。
利益が 約17%消えた。
たった5万円で、
あなたは自社の利益の6分の1を手放した。
この事実を、
感覚として理解している経営者は、ほとんどいません。
■ 逆に考えてみてください
では、逆の視点を持ちましょう。
利益率30%の会社が、
この5万円を取り戻すには、
いくらの売上が必要でしょうか。
答えはこうです。
5万円 ÷ 30% ≒ 約16万7千円。
つまり、
5万円の値引きを帳消しにするために、
約17万円の追加売上が必要になります。
どうでしょう。
一気に重くなりませんか。
■ 値引きは、努力を一瞬で消す行為
現場での改善。
原価の見直し。
手戻りの削減。
スタッフの頑張り。
これらを積み重ねて、
ようやく数万円、十数万円の利益改善をする。
ところが、
クロージングで「5万円引きます」と言った瞬間。
それらすべてが、一言で消える。
これが、
忙しいのに儲からない会社が生まれる正体です。
■ なぜ経営者は値引きをしてしまうのか
理由は難しくありません。
売上を先に見て、利益を後で考えているから。
・今月の受注が足りない
・売上目標が未達
・とにかく契約が欲しい
この状態では、
値引きは「手っ取り早い解決策」に見えます。
しかし実際には、
未来の利益を前借りしているだけです。
■ 値引きは営業判断ではない
ここで重要なことがあります。
値引きは、
営業の裁量で決めていい話ではありません。
経営判断です。
なぜなら、
値引きは売上の問題ではなく、
利益構造そのものを壊す行為だからです。
・最低利益額
・損益分岐点
・年間で守るべき利益水準
これらを理解せずに行う値引きは、
会社の体力を確実に削ります。
■ 「たった5万円」が会社を弱らせる
もう一度、冷静に整理します。
100万円の工事
利益率30%
利益30万円
5万円の値引きで、
利益は25万円。
利益17%減。
これを年に10回やったらどうなるか。
本来残るはずだった利益は、
50万円消える。
それは、
社員の賞与かもしれません。
設備投資かもしれません。
あなた自身の余裕かもしれません。
値引きは、
会社の未来を静かに削る行為です。
■ 値引きをしない会社は、強気なのではない
値引きをしない会社は、
強気だから値引きをしないのではありません。
最初から、値引きを前提にしていない。
・利益額を先に設計している
・商品に理由がある
・価格に説明ができる
だから、
値引きという選択肢が、
そもそも存在しないのです。
■ 最後に
値引きは、
「5万円」ではありません。
利益を何%削るか、という経営判断です。
この感覚を持てるかどうかで、
会社の未来は大きく変わります。
売上を取りに行く前に、
利益を守る。
この順番を間違えないこと。
それが、住宅会社経営の土台です。