「値引きします」と言った瞬間、あなたの会社は弱くなります
最終的に、
「少しだけ値引きをして受注した」
そんな経験、ありませんか。
私は、例外なく値引きには反対です。
安易な値引きこそが、
住宅業界そのものを弱くしてきた原因だと考えています。
正直に言えば、値引きという行為自体が、
世の中から無くなってしまえばいいと思っています。
■ 値引きが当たり前になると、業界は必ず衰退する
理由はとても単純です。
お客様が
「値引きしてもらうのが当たり前」
と思ってしまうから。
一度この認識が広がると、
価格は交渉するもの、ゴネるもの、という前提になります。
■ よくある2組のお客様の話
とても良いお客様、A様がいます。
最初に提出した間取りで「これで大丈夫です」と言ってくれる。
住宅会社は最初からあなたの会社一社のみ。
無理な要望もなく、提案を素直に聞いてくれる。
値引きの話も一切出ない。
一方で、B様。
最初の間取りは気に入らず、何度も修正。
複数社に間取りを依頼し、
「あっちの収納がいい」「こっちのキッチンがいい」と比較。
なかなか決断せず、最後は強い値引き交渉。
結果、要求どおりではないものの、
予備費や調整分で実質的な値引きをしてしまう。
——正直、あるあるではないでしょうか。
■ 経費がかかっているのは、どちらのお客様か
冷静に考えてみてください。
経費がかかっているのは、
間違いなくB様です。
・プラン作成の回数
・打合せの回数
・価格調整の時間
・他社比較への対応
・精神的な負荷
すべてB様の方が多い。
それにもかかわらず、
値引きをするのはB様。
これでは、
ゴネた方が得
というメッセージを業界全体で発信しているのと同じです。
■ 値引きをすれば、A様が一番損をする
もしB様に値引きをするなら、
本来はA様をもっと値引かなければ、経費のつじつまは合いません。
でも、実際は逆です。
素直で良いお客様ほど、
値引きをせずに契約してくれる。
結果として、
良いお客様の利益が、難しいお客様に回る
という歪んだ構造が生まれます。
ネットを見れば
「必ず複数社を回りましょう」
と書かれている時代です。
だからこそ、
私は例外なく値引きをしませんでした。
■ 値引きで選ばれるなら、それは魅力不足
値引きを断って、他社を選ばれる。
それは仕方がありません。
その程度の値引きで決まってしまうなら、
自社の魅力が足りないだけ。
そう考えて、
標準仕様や提案内容を徹底的に見直しました。
■ 10万円の値引きは、実は30万円の値引きです
ここからが、
多くの経営者が見落としている本質です。
例えば、10万円の値引きをしたとします。
工事費から10万円を引く。
原価は変わりません。
職人さんに値引きをお願いするのは、私は論外だと思っています。
つまり、
10万円の利益を削ったということ。
利益率30%の会社なら、
この10万円は、約30万円分の工事利益に相当します。
■ 値引きの回収は、ほぼ不可能に近い
削った10万円を取り戻すにはどうなるか。
新たに30万円の工事を受注して、
ようやくプラスマイナスゼロ。
現時点ではマイナス10万円ですから、
実際には60万円分の工事をしなければ回収できません。
売上を取るために値引きをした結果、
忙しいのに利益が出ない。
だから、
もっと受注しなければならない。
さらに忙しくなる。
悪循環は、こうして始まります。
■ 適正な利益は、経営を楽にする
私は、
法外な利益を取れと言っているわけではありません。
適正な利益があれば、
無理をしなくても経営は成り立ちます。
自社で年間に何棟施工できるのか。
そのために必要な人件費はいくらか。
そこから逆算すれば、
年間に必要な粗利額は必ず出ます。
これを把握していれば、
安易に10万円、20万円の値引きはできなくなります。
■ 値引き前提の見積もりが、すべてを壊す
値引き前提で見積書を作ると、
この流れはさらに加速します。
顧客は
「どうせ値引きできる」
と考える。
だから、
次は多めに乗せる。
顧客はそれを見越して、
さらに値引きを要求する。
——では、
最初の見積金額の根拠は何なのか。
ここが曖昧になると、
信頼も価格も崩れていきます。
家電メーカーがオープンプライスを導入したのも、
この構造が原因です。
■ 値引きをしない業界をつくるという視点
私たちは、
根拠をもとに、計算して契約金額を出しています。
それなら、
その金額で堂々と受注すればいい。
どの会社も値引きをしない業界になれば、
お客様は当たり前に値引き交渉をしなくなります。
それは、
私たち自身のためでもあり、
これから業界に入ってくる後輩たちのためでもあります。